クリンゴン人(クリンゴン語:tlhIngan、英語:Klingon)はアメリカのSFテレビドラマ/映画『スタートレック』シリーズに登場する架空のヒューマノイド型異星人。惑星連邦、ロミュラン星間帝国、カーデシア連邦に隣接し、アルファ、ベータ宇宙域にまたがって広がる星間国家の一つ、クリンゴン帝国を支配している。帝国には三本の爪を象った紋章があり、随所で使われている。正式に名前を呼ぶ時には「……(父親の名前)の息子(または「娘」)……」(..., son/daughter of ...) と言う。
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『宇宙大作戦 (TOS)』においては「何かと惑星連邦に楯突く、宇宙第二の覇権大国」という旧ソ連風の負のイメージが強かった。しかし徐々にイメージが改善され、以下の諸設定が付け加えられた(TOSのクリンゴン人はかなりベタな悪役で、勇猛というより残虐、狡猾で卑劣であった)。
クリンゴン人の身体は男女共一般的に大きく、堅牢な骨格と発達した筋肉に覆われている。女性は乳房の発達も地球人と比べ大きい。肌は浅黒く、男性は必ず髭を生やしている。また頭蓋が非常に発達しており、額の波状隆起が特徴的。これは非常に硬く、戦闘時における脳へのダメージを軽減させるための役に立っている。戦闘種族としての身体特徴は体内の主要な臓器にも見られる。生命維持に必要な主要臓器は複数あり、戦闘中に負傷しても行動し続ける事ができる。ただ、意味のない生よりは死を尊ぶ倫理観を持つために、麻痺・重症患者の治療は行われず、また、死体は単なる精神の抜け殻だとして見向きもしないために、解剖学が発達せず、詳しい生理は分かっていない。また、クリンゴンのセックスは男女両者が激しく興奮し、お互いの暴力衝動をぶつけ合うような、流血を伴う凄まじいものである。
クリンゴン人の変異
TOSに登場したクリンゴン人のメイクは地球人とあまり変わらないもので、映画『スタートレック (TMP)』以降とは全く違う。この「真の」原因はもちろん当時の特殊メイク技術の限界とTOSの低予算が原因である。多くのファンは見て見ない振りをし、作中世界にはこの違いは存在しないと考えた。『スタートレック:ディープ・スペース・ナイン (DS9)』第39話「血の誓い」では、TOSに登場したクリンゴン人と同一人物が「TMP型」メイクで現れ、この考えを補強した。
『DS9』第104話「伝説の時空へ」では、この違いが登場人物により語られ、作中世界に実際に存在する違いであることが明らかになった。その原因については、ウォーフが「外部のものには明かさないことになっている」と語り、一部のファンはこれを一種の楽屋オチ、つまり、原因は制作上の都合だから作中人物には語れないのだと解釈した。ただしこのとき、オブライエンが「遺伝子工学」、ベシアが「ウイルスの突然変異」と推測を述べている。
『スタートレック:エンタープライズ (ENT)』には「TMP型」のクリンゴン人が登場し、「TOS型」が23世紀に限られていることが明らかになった。そして第91話「Affliction(クリンゴンの苦境)」と第92話「Divergence(優生クリンゴン)」で、全ての経緯が明らかになった。
それによると、地球で開発された優生人類のDNAは秘密裏に保管されていたのだが、遺伝子工学の権威であるエリック・スン博士によって盗み出され、新たな優生人類が誕生していた。その事件自体は、エンタープライズの活躍によって収束し、新たに作られた優生人類たちは死に絶えた。しかしスン博士の優生人達が盗んだバード・オブ・プレイの残骸から、優生人類の受精卵を発見したクリンゴンは、密かに優生クリンゴンの開発に着手した。だが予想外に強い遺伝子は、クリンゴンの遺伝子に悪影響を与えてしまった。すなわち額の隆起が消滅し、外観が地球人そっくりになってしまったのだ。
さらに被験者がヴォディア風邪に感染してしまい、優生遺伝子がウィルスとなってしまったのだ。このウィルスは空気感染するため、瞬く間にクリンゴン全体を襲う脅威となった。当初クリンゴンは感染者を抹殺しようとしたが、結局それでは完全に防ぐことができず、むしろエンタープライズやフロックスの協力で作成された抗ウィルス剤の使用が最適と判断された。この抗ウィルス剤は、命を救うことはできるが、変化は止められなかった。その結果100年以上に渡って、地球人と外観の似ているクリンゴンが一般的となったのだ。
つまり後にオブライエンとベシアが出した推測は、両方とも当たっていた。
精神
クリンゴン人は好戦的な戦闘種族である。戦うこと自体に意味を見出しており、「何のために戦うか」ということに関心がない。そのため戦えない者は生きる資格が無いとされ、負傷などで戦えなくなった者は、儀礼的な名誉の戦死として自決することが良しとされる。敵を倒す事はもちろん、上官の能力がその地位にふさわしくなければ決闘を申し込み、殺して自分が取って代わる事も日常的に行われている。そのため、捕虜になったり病死する事は、クリンゴン人として不名誉な事であり、病死や捕虜になると「あの役立たずめが」「名誉の戦死も出来無い臆病者」「おめおめと生きながらえているクズ」「屍同然の恥晒し」等と蔑まれ、たとえそれが父親や先祖・身内であっても“一族の恥”として罵倒する。しかし、最大の不名誉は裏切りである。名誉を重んじる戦士にとって裏切りはあってはならないことであり、これが発覚すれば本人だけでなく一族が“裏切者の一族”の汚名を受け、侮蔑の対象となる。
クリンゴン人戦士は戦闘や精神修練により、自己を鍛錬し、より高みを目指すことを本分とする。これは死後、建国の祖にして伝説の英雄カーレス (qeylIS) の元に召されることを精神的拠り所とするためである。クリンゴン戦士は死した戦友を葬る際、その両目を見開かせ、自らの眼で覗き込み、天に向かって雄たけびを上げる儀式を行う。これは、「今、戦士が逝く」ことをカーレスに伝える意味を持つ。死者の魂は「死者の船(船長はコーター qotar)」と呼ばれる大船に乗せられて激流(同様の伝承としてはギリシア神話のステュクスや仏教の三途の川等がある)を越え、勇者として死んだ者は「スト・ヴォ・コー (SIto'vo'qor)」へ、そうでない者はフェックラー (veqlargh) が支配する「グレトール (ghe'tor)」へ送られる。なお、たとえ不名誉な死を遂げた者でも、その家族や友人が代わりに戦い、勝利を死者に捧げればスト・ヴォ・コーへ行けるようになる。
文化
クリンゴンの文化は、日本の武士文化や、モンゴル騎馬民族のそれに類似する。基本的には名誉を重んじ、虚言や臆病などを良しとしない。情熱的であり、義理堅い民族性を持つ。また、建国の祖・カーレスについて学ぶ事も重要で、カーレスにまつわる故事や伝説も沢山あるようで、ウォーフが息子のアレキサンダーによくカーレスの故事を引き出して教育しようとしていた。
クリンゴン人の主な娯楽は戦闘訓練を兼ねた闘技や「バトラフ(betleH)」という独特の武器を用いた演武、愛憎や歴史的英雄をストレートに歌い上げるオペラなどが有名であるが、それらは酒宴とは切っても切り離せない性格を持つ。その一方、茶道(毒を飲む)や成人の儀式(激痛を克服する)など儀礼的な“静”の文化も持つ。バトラフを用いた武術大会があるようで、ウォーフはそこで優勝している。
クリンゴン料理は新鮮な素材を使った物が多く、ガーフ(ガーグ, ghargh)と呼ばれる大型のミミズに似た生き物に至っては生きたままが最良とされる。ガーフには50種類以上あるらしいが、他種族が違いを見抜くのは難しい。ロケグの血のパイ(ro'qegh'Iwchab)など火を通す料理もある。人間には毒性があり食べられないものも多い。レプリケーターでは生き物や毒は生成できない為、クリンゴン料理を振舞う店は珍しがられ人気があり、店主は料理とともにオペラも聞かせてくれる。戦士として長年他種族と戦ってきたクリンゴン人にとって、かつての敵であった種族に対して料理人や音楽家として関わるクリンゴン人は、血の気が多い同族や年寄りに疎ましく思われることもある。ブラッドワイン('Iw HIq)という極めて強い酒が好まれる。クリンゴンのコーヒーであるラクタジーノ(ra'taj)は、多くの他種族に親しまれているポピュラーな飲料である。
劇中で彼らが使用するクリンゴン語は言語としての完成度も高く、ISO 639(言語名コード規格)第2部で"tlh"が割り当てられている。米国ではクリンゴン語会話の教材や辞書も発売されている。発音は戦闘種族らしくアクセントが極端で、また、地球語には翻訳出来無い言葉もあるようだ。有名な言葉にカプラ(Qapla' (=SUCCESS) 「武運を」と言う意味)がある。
政治
クリンゴンは帝国制を敷く封建的国家であるが、総裁(または宰相)を頂点とするクリンゴン最高評議会及び元老院が政治、帝国の方針の全てを決める。先の虚言や臆病など、国家や評議会などの名誉を著しく傷つけた物には制裁が加えられるが、ウォーフの追放もその一例。ウォーフの追放の例を見ても、評議会や元老院も有力な一族には弱く、クリンゴン帝政の形骸化が露わになっている。
一応諜報部も存在するが、ロミュランのタルシアーやカーデシアのオブシディアン・オーダーとは比べると民族性からか非常に小規模なもので、特に組織名も無い。表向き隠されているのも、単純に戦士にあるまじき不名誉なことと考えられているためだろう。
歴史
クリンゴン帝国は地球暦で9世紀頃、英雄カーレスによって建国された。
14世紀頃には異星人種族ハーク(Hur'q クリンゴン語でよそ者の意味)の侵略を受け、カーレスの剣が奪われる。
2069年から2369年まで皇帝は空位となり、総裁(または宰相)が最高評議会を束ねて帝国を統治した。
地球人と初めて接触したのは22世紀であり、2151年に地球人が初めて訪れる。23世紀には惑星連邦と激しい対立状態にあった。
だが2293年にプラクシスの大爆発により甚大な環境破壊を被り、国力の低下を懸念した時の宰相ゴルコン(ghorqon)によって連邦との和平が図られる。ゴルコンは反対派に暗殺されたが、最終的に和平協定は成立した(映画6作目『スタートレックVI 未知の世界』)。その後、両国はほぼ平和裏に共存している。
2369年、初代皇帝カーレスへの信仰を守る僧侶たちによって、秘密裏にカーレスのクローンが作られた。彼は最終的に皇帝として認められたが、実権は最高評議会と総裁が持ち続けている(日本の天皇と幕府の関係に似ている)。
『ENT』では、2554年に惑星連邦へ加盟することになっている。
支配下の星
クロノス(Qo'noS)
帝国本星であり、クリンゴン帝国の中枢。
プラクシス(pIraQIS)
クロノスの衛星。
キトマー(クリンゴン語: QI'tomer、英語: Khitomer)
ロミュラン星間帝国との境界付近にあるため、2344年にキトマーの大虐殺と呼ばれる事件が起き、ウォーフとカーンの兄弟はこの時孤児となった。また2293年にキトマー条約と呼ばれる、クリンゴン帝国と惑星連邦の和平条約締結が行われた(先の映画6作目)。またこの時無実の罪を着せられたカーク艦長とドクター・マッコイを弁護したクリンゴン人のウォーフ判事は、その後TNGで活躍するウォーフの祖父であり、俳優も同じマイケル・ドーンが演じている(吹き替えは異なる)。この奇遇は撮影中に出たアイデアだと言う。
ボレス(Boreth)
クリンゴンの伝説上、カーレスが帰還する場所とされていた。
戦闘スタイル
主力戦艦はバード・オブ・プレイと呼ばれる緑色の艦。ロミュラン帝国のウォー・バード同様に船体の色が緑色なのは遮蔽装置を使用する為に必要らしい。遮蔽装置の技術はロミュランとの同盟関係があった時代に供与されたもので、同盟解消後も自前で生産、改良している。戦艦での戦闘でも危険を顧みない勇敢な戦い方をすることが多い。
主力戦艦のバード・オブ・プレイには、小型の戦闘艇とそれを何十倍にもスケールアップした大型戦闘艦の二種類がある。 それぞれ、可変翼にディスラプターを装備した大気圏突入さえ可能な小型で軽捷なケーボート、3隻ならばギャラクシー級にさえ正面から打ち勝つ大型のケーブレルがある。 ケーボートは数も多く、最低乗員は12名程で短時間の全力発揮が可能な戦闘艇で、ドミニオンの戦闘艇とも互角に戦える。
その他に、クリンゴンの軍艦としては”巡洋艦”と呼ばれる多数の重装備の戦闘艦が存在する。 スタートレック・ヴォイジャーの小説版では、クリンゴン帝国の巡洋艦は一般に重装甲であり、ヴォイジャーの第二フェーザー程度では直撃でも放射線防護壁がわずかに損傷する程度しか効果が無いと言う記述がある。 23世紀のクリンゴン巡洋艦は発展してTNGの時代まで現役で就役している。(エクセルシア級も同時代からTNGの時代まで現役。)
TNG時代の新型巡洋艦としては、クンベックの旗艦として登場したヴォルチャ(復讐)級の攻撃巡洋艦とネグヴァー級の打撃巡洋艦がある。 ヴォルチャは艦首に巨大なディスラプターを装備した重武装艦。 ネグヴァーはTNGの最終回に出て来た未来のクリンゴン艦をリメイクしたギャラクシー級以上のスケールのクリンゴン巡洋艦。
クリンゴン艦艇の多くは、中央船体の脇に二つのワープナセルがあり、惑星連邦の探査艦艇と最も近い設計思想であると思われる。 クリンゴン艦艇の動力それ自体は、惑星連邦の対消滅動力、ロミュランの潮汐動力とも全く違うエネルギー等換動力であると言う。 クリンゴン艦艇の武装は、ENTの時期から一貫してディスラプター(位相変換プラズマ放射装置)であり、ENTの時代に光子魚雷が装備された。 光子魚雷は元来クリンゴンの発明品である。
代表的なクリンゴン人
ゴルコン(ghorqon)
ウォーフ(wo'rIv)
カーン(モーグの息子)(qurIn)
ガウロン(ghawran)
マートク(martaq)
クンペック(qI'empeq)
デュラス(DuraS)
ルーサ(lurSa')
ベトール(be'etor)
ベラナ・トレス(B'Elanna Torres 父親が人間、母親がクリンゴン人)